2023年12月07日

「海原を越えて」 国府正昭 開架中



「海原を越えて」 国府正昭 開架中です。

収録作品
「斗馬の叫び」
「雨ぞ降る」
「蛇男と黄色い水」
「浄水場にて」
「幸せの隣」
「迷い猿」
「あの歌を聴きたい」
「水谷伸吉の日常」
「海原を越えて-赤須賀異聞-」

国府さんは中部ペンクラブ、同人誌「海」、掌編小説「ムーの会」で活躍されています。
今回かさでら図書館に、自著を一冊提供頂きました。
2011年から2017年まで同人誌「海」に掲載された作品を載せた短編集です。
国府さんは私の五歳年上で、頼れる先達です。
社会派作家としての印象が強いのですが、歴史物でも優れた作品を書かれています。
人柄も温厚で、合評会の場でも作者の立場を考慮されています。
これが三冊目の著書となりますが、これからも新著を発刊されることでしょう。

この著書では「あの歌を聴きたい」が最も心に残りました。
まだ肺病が不治の病として恐れられていた時代。
肺病病みの父と暮らす少女と、それに淡い恋心を抱く少年の姿を描いています。
差別を憎む少年の心の中にも、やはり差別が根ざしている。
それに気付いた少年の悲しみが伝わってきます。

国府正昭プロフィール(2020年現在「湿った時間」著者紹介参照)
1956年 三重県生まれ
学生時代に同人誌を創刊し、日本文学学校に通う。
教員になり、十年余中断の創作活動を再開。
2000年 三重県文学新人賞受賞
2021年 「シジフォスの営み」で中部ペンクラブ文学賞受賞
同人誌「海」編集委員
著書
「夜も流れる川」
「間瀬昇と一見幸次」
「海原を越えて」

感想はE-mailで髙見まで。
  

Posted by GAMERA at 21:55Comments(0)TrackBack(0)市民作家

2023年11月12日

「湿った時間」 宇佐美宏子 開架中



「湿った時間」 宇佐美宏子 開架中です。

収録作品
「湿った時間」
「淫雨」
「秘色」
「春の泥」
「赤い財布」
「刺青偶奇」
「闇の色」
「アナザー・ローズ」
「炎の残像」
「紅蓮の街」
「鯖雲」
「象のいた森」

中部ペンクラブ、同人誌「海」、掌編小説「ムーの会」で活躍されていました。
私も「弦」合評会等で数回お目に掛かり、この本を頂きました。
宇佐美さんは、文学においてはっきりと自身の意見をおっしゃる方でした。
恐くもあり、優しくもありで、同好諸氏の尊敬を集めていました。
今は筆休めをされています。

帯びで前中部ペンクラブ会長の三田村博史さんが収録作「秘色」(ひそく)を紹介しています。一部抜粋します。
「…笙子は伯父の膝にのせられていた小学校5年生の自分をも思い出していた。両手が笙子の腹部で組み合わされていて、お尻をわずかに動かすと、伯父の太股がびくんとした。今は分からないでもそのうち分る。…すでての色には名前と女の性、そして人生がある。…」
宇佐美さん特有の艶めかしさを是非お読みください。

私の一推しはなんといっても「鯖雲」です。
とても短い掌編で、あっという間に読めてしまいます。
私はこの作品を自分の創作の目標にしています。写本もしました。
終戦直後の日本の風景を、少女の視点で描写した作品です。
それまで日本を支えていた価値観が崩壊していく。それを少女の無垢な心で描き出す。必読です。
かさでら図書館に座ってコーヒーでも飲みながらお読みください。

宇佐美宏子プロフィール(2020年現在「湿った時間」著者紹介参照)
徳島県徳島市生まれ
1987年~1991年 「作家」同人
1993年~2012年 「カプリチオ」同人
2015年~ 「海」同人
中部ペンクラブ会員
愛知県芸術文化協会会員
著書「情念川」「秘色」「裸身」
2011年「裸身」で中部ペンクラブ文学賞受賞

感想はE-mailで髙見まで。
  

Posted by GAMERA at 10:33Comments(0)TrackBack(0)市民作家